バイト先や電話対応時の吃音に対するコツや工夫
吃音に関する悩みとして多いのは、電話の対応がうまくできないということや特定の言葉を使わなくてはならない場面や状況が出てくる、といった仕事に関する悩みではないでしょうか。
今日は、そのなかでもバイト先での吃音、電話対応時の吃音について、とりあげたいと思います。
バイト先での吃音の悩み
アルバイトは学生時代は皆さん経験されたと思います。
私もアルバイトしていましたが、大学生(や高校生)のバイトは多くが接客業ですよね。
気軽に応募できますし、時間帯も学業優先の学生からすると選びやすい。
接客業は、いま一番多いのはコンビニエンスストアですね。
学生さんがわんさかおります。
そしてファミリーレストラン、居酒屋、スーパー、アパレルショップの販売員もいましたね。
このあたりが学生さんがすぐに始めやすい、選びやすいアルバイトではないでしょうか?
この接客業は、実は吃音のある方にとってはとても難題がたくさんあるんですね。
「いらっしゃいませ」
「ありがとうございました」
このワードはとてもよく使いますよね。
接客業においては必須であり、ほぼ自動的に出てくるこの単語。
慣れてしまえば、本当に自動的に言葉になるはずのこれらの単語ですが、吃音者で、「あ」や「い」が話しづらい方にとっては、非常に困る問題になります。
実はあいうえお、の母音を発声しづらいという声は時々聞かれます。
「いらっしゃませ」の「い」が出て来ないので、「・・・っらっしゃいませ」となってしまったり、「いーーらっしゃいませ」と最初の音を伸ばして言うというような感じです。
それでは、この「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」という言葉をうまく声に出すにはどうしたらいいのか?
言いづらい言葉を発声するためには?
一般的に、吃音治療(言語訓練)で言われているのは、
- ゆっくり話す
- リラックスして話す
- 抑揚をつけるなどして歌を歌うように話す
- 手振りなどの身体的な動作を加えることで言葉を出しやすくする
といったことです。
ゆっくりと話す事で、最初の一語目で力むのを予防します。
リラックスすることで、話をする際に使う筋肉を力ませないようにします。
また、抑揚をつけることで普段話している話し方、リズムを変えて話すようにします。
また、動作を加えるというのは、自然に行われることが多い様ですが、動作を加えると言葉が出やすく感じる、というものです。
これは、人によって様々な動作があります。
肩を揺らしたり、手を動かしたり、顔を触ったり、などなど。
こういった方法が一般的にはよく活用されている方法です。
しかし、残念ながらこういった方法を使ってもうまく話せない、ということはよく聞きます。
不自然な話し方になってしまう、という悩みになることもしばしばです。
それでは、吃音(どもり)はどのように解決したらいいのか?
改善しない吃音はどうすればいい?
以下のように視点を変える事が助けになるといいます。
初めから「どもりをなくす」という目標に立たずに、目標設定を変えて、様々な方法をトライすること。
例えば、
どもらないで話す
ということを目標に置くとどうなるでしょう?
上記の方法を使ってもうまく話せないかもしれません。
そうすると、この方法は失敗になるわけです。
その結果、「やはり僕にはうまく話す事ができない」という経験が積みかなさっていくことになります。
それによって余計に気になって話せない言葉が増えたり、症状が悪化するということがあります。
それでは、目標を少し変えて
どもりを減らす
という設定にしてみたとします。
そうするとどうでしょう。
様々な方法を使って、前よりは吃音(どもり)の回数が減ったかも?という体験ができる可能性が広がります。
そういった前向きな積み重ねによって、自信がつき、吃音(どもり)の症状にも変化が現れていきます。
実は吃音(どもり)は、原因が解明されておらず、またその治療法も確実ではないのです。
これまで、心理学や医学、言語病理学などの様々な分野で研究がなされてきたけれど、吃音の原因も特定されていませんし、吃音がどうすれば治るのかについても確立されていません。
ですが、不治の病というわけでも決してありません。
実際に、吃音が治ったという人は居ますし、様々な分野で活躍している吃音者(または元吃音者)がいます。
ですので、あきらめないで取り組む事が大切です。
そういった背景から、やはり目標設定を見直すというのはとても有意義ではないかなと思います。
言いづらい言葉を言わないという選択
私の知っている患者さんは、
話しづらい言葉は予めわかっているので、この言葉を他の言葉で言い換えようといつも考えている
といいます。
例えば、職場の朝礼の挨拶で
「おはようございます。今日は○○との打ち合わせが×時からです」
といいたい時
「それでは始めます、今日は○○との打ち合わせが×時からです」
といったように、「お」が出にくい場合に、それを回避して似たような言葉、関係のない言葉を挟む等することです。
出にくい言葉を回避するのは、メリットとデメリットがあります。
メリットとしては、
- 出にくい言葉を言い換えることで、話がスムーズになる
- スムーズになるので、失敗にならず、自信が削がれない
- どもってしまうことで「変に思われるんじゃないか」と気に病む事がなくなる
といったことが挙げられます。
一方、デメリットとしては、
- いつも違う言葉を考えているので、相手の話を聴いていない
- いつも回避してしまうため、その言葉を使う事に不安や恐怖が強まる
- 結果、余計に吃音がひどくなる
といったことがあげられます。
ケースバイケースになると思いますが
私が勧めるのは、できるだけ言い換えずに、回避しないことです。
というのは、回避しないことで「どもっていても、相手はそれほど気にしていない」という体験ができるからです。
回避していると、自分の中にある不安は強まる一方です。
しかし、何度もその場面を体験していれば、思っていたほどどもらなかった、とか、思っていた程、相手は怪訝にしていない、笑われなかった、などと実際を知ることができるからです。
私たちの不安や恐怖というのは、私たち自身で作られていきます。
ですから、出来る限り、それを取り除く事をお勧めしています。
それは、現実をきちんと見据えることができ、不安や恐怖にあおられ、何もできなくなる、無力な状態になる、ということを防ぎます。
吃音やどもりによってコントロールされない、という感覚がとても大切です。
しかしながら、状況によっては言い換えも必要です。
大事なプレゼンなど、「この場面で失敗すると、自信が失われてしまう」といった状況であれば、むしろ積極的に言い換えをしても良いでしょう。
いずれにしても、選択の基準は自信を削がれることがないようにすることです。
そうすることで、デメリットを最低限にすることができるはずです。
まとめ
今回は、バイト先や電話対応時の吃音に対するコツや工夫についてお話しました。
工夫やコツはありますが、改善できない場合もあります。
視点を変えて、目標設定の難度を下げていく事によって、成功体験が積み重なり、症状悪化を防ぐ事ができます。
言葉の言い換えは、積極的には勧められませんが、状況に応じて変えていきましょう。
できるだけ、言いづらい言葉も使うように意識し、大切な場面では言い換えを使って失敗を回避していきましょう。
参考になりましたら幸いです。
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