吃音の有名人ジョージ6世「英国王のスピーチ」を心理学的に見る

こんにちは。臨床心理士のちむです。

昨日、自宅で映画鑑賞をしたのですが

「英国王のスピーチ」

この映画は、2011年に日本で公開され、第83回アカデミー賞では作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞を受賞した、非常に高い評価を受けた映画です。

この映画は、吃音に悩まされたイギリス王ジョージ6世とその治療に当たった平民のスピーチセラピストとの友情を史実を元に描いた作品である、ということです。

映画が好きな方以外に、吃音に関心のある方も気になる作品でしょう。

今日は、この映画を「吃音治療」という面で、心理学的な観点から解説していきたいと思います。

大まかなあらすじ

舞台は、第一次世界大戦後の英国。

その頃の英国(大英帝国)は、植民地を含め最大の領地を誇る超大国だったと言われています。

第二次世界大戦後には、アメリカが台頭し、植民地は次々と独立していき、その勢いは衰えていったと言われていますから、ちょうど最盛期を過ぎた頃のお話になるのでしょうか。

主人公は、国王を父に持ち、のちにイギリス王ジョージ6世となるヨーク公アルバート王子。

現在のイギリス・エリザベス女王の父にあたる方のお話です。

彼は、吃音症に悩まされていました。

公務は、公衆を対象に演説をすることが大きな役割であり、吃音はまさにその職務の支障とならざるを得ず、これまでもアルバート王子は妻のエリザベス妃の勧めで様々な治療を受けて来ました。

しかし、なかなか治療が奏功しません。

そんな中で出会ったのが、平民のスピーチセラピストライオネル・ローグです。

彼の治療は、口の筋肉をリラックスさせたり、呼吸のトレーニングをしたり、発声訓練をしたりといったことのほか、これまでの治療と違い、お互いの関係を対等にし、信頼関係をとても大切にしていました。

治療の中で、アルバート王子は自分の生い立ちや、矯正されて来た過去、てんかんがあったためにその存在すら隠され、若くして亡くなってしまった弟の存在などを打ち明けます。

時間をかけながら、二人は信頼関係を築き、心を開いて、吃音症も改善されていきました。

父の死後、兄がその王座を継承したものの、周囲から不適格者と言われ、兄自身もその王座から去りたいと申し出て、即位してから1年も経たないうちに弟のアルバート王子へ王位が継承されます。

そして、アルバート王子がジョージ6世として即位します。

即位後、1939年ヒトラー率いるドイツがポーランドを侵攻し、英国はドイツに宣戦布告、第二次世界大戦が始まります。

その時の英国民・海外に向けたラジオスピーチをジョージ6世が行いますが、ライオネルがその演説の場に同席し、力を合わせ、素晴らしい演説をするシーンで映画は終わります。

その後も、二人の友情は続き、 ライオネルはロイヤル・ヴィクトリア勲章のコマンダー賞を授与

した。

その賞は、王室に奉職したものへ贈られる勲章で大変名誉なものである、そうです。

 

心理学的にみた、ライオネルの治療

ライオネルは、まずお互いの名前の呼び方も気を遣っていました。

平民であるライオネルが、王族に対して非常に親しい関係であることを示す「愛称」バーティで名前を呼んでいました。

これは、互いに対等な関係であることを行動で示していると言えます。

対等の反対、対等ではない状態は、例えば、階級による差は顕著なものです。

親子や、先生と生徒、も対等とは違うかもしれません。

対等であるとは、お互いにお互いを尊重し、どちらかがどちらかに服従したり、指示・命令をしたりすることのできない関係、だといえます。

対等な関係というのは、自分の話が否定されることがないわけです。

こうした対等性は、カウンセリング場面ではとても重要で、クライエントが自己開示するための必須条件となっています。

次に、ライオネルは彼の生い立ちを詳しく聞いていきます。

バーティは、過去に左利きを矯正されたこと、X脚を固い器具をつけられて矯正されたこと、吃音について、正しく話すように矯正されたこと。

預けられていた乳母から、食事を与えられなかったり、つねられるなどの虐待されていたこと。

下の弟が、てんかんがあったため、人とは風変わりだったことから存在を隠され、そのまま病気で亡くなってしまったこと。

色々な話をしました。

こうしたプライベートな事は、同じ家庭内にいる者に話しても、理解されません。

多くの場合、それが「普通」と思っている、その価値観がその家で普通だからです。

どこかで、バーティが自分の話を安心し、信頼して話すことができ、それまでの辛さを肯定してもらえていたら、吃音もより和らいだのかもしれません。

映画のワンシーンで、ライオネルはバーティに、友人の存在について聞きます。

しかし、バーティは友人の存在を否定しました。

これまで話せる人がいなかったのです。

バーティは、家族、乳母、仕える人々に囲まれてはいましたが、心を許せる相手がいなかったわけです。

のちに、彼らはながく親交を共にした、ということですから、吃音の治療後も、お互いになくてはならない大切な存在に変わっていったのでしょう。

こうした、傾聴・共感される体験は、のちにバーティの自信に代わり、自尊心を補強することに繋がったはずです。

それから、ライオネルは舞台俳優でもあったそうですが、

そうした彼の能力は、人を「今ここ」に引き込むことに繋がっていたと思います。

今ある素直な感情を吐き出すために、例えば国王の椅子に座って挑発をするという場面は、その最たるものかと思います。

自分が感じている感情を引き出し、それを吐き出ささせる。

バーティは、正義感が強く真面目な良い気質がある一方で、癇癪持ちで短気な面がありました。

相手を罵倒するような表現は、禁止されていましたが、それをあえて大きな声で出させていました。

自分の中にいる、隠れたもう一人の自分を解放させ、抑圧を緩めていったとも言えます。

常に、抑制・抑圧的な環境にいたバーティのガス抜きを手伝うことも、吃音の症状改善に良い影響を与えたのではないでしょうか。

まとめ

「英国王のスピーチ」を心理学的に見ていきました。

ライオネルは、心理学者ではありませんでしたが、そうした素養を身につけており、

バーティの治療は発声言語のセラピーだけにとどまりませんでした。

そうした視点で映画を見て見ても、面白いと思います。

 

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